目次
事案の概要
本件は、Cの遺産相続を巡り、同人の二男であるA(原告)が、三男であるB(被告)に対し、B被告がCから遺贈を受けた土地につき、遺留分減殺請求権を行使し、原告に帰属したと主張する持分(1万分の1342)の移転登記を求めた事案である。
Aは、Cの相続財産の総額は1億7543万7000円であり、この全てがAを除く相続人(Bを含む)3名に遺贈されたが、このうちCの配偶者に対して5925万1000円相当の不動産等(相続財産の33.78%)、被相続人の長男に対して727万7000円相当の土地(相続財産の4.14%)、Bに対して1億0890万9000円相当の当該土地(相続財産の62.08%)がそれぞれ遺贈されたため、Bに対する当該遺贈のみが法定相続分を超え、原告の遺留分(相続財産の12分の1、1461万9750円)を侵害しているとして、当該土地に対する遺留分減殺の結果、Aが当該土地について1万分の1342の持分(1461万9750円÷1億0890万9000円=0.1342、1万分の1の位未満切捨て)を有することになると主張した。これに対し、Bは、AがCから受けた生前贈与は、下記の金員の合計3101万2600円並びに本件土地及び本件宅地の使用貸借権の価額であるところ、これは民法903条1項に規定する特別受益に当たるなどと争った。
1.土地の賃料相当額 1236万1440円
(月額10万5436円×120か月=1236万1440円)。
2.Aのアパート建設費用のため、本件土地への仮登記担保権及び抵当権の設定 1000万円
3.CがAに贈与した、本件住宅のうち持分2分の1 232万5000円
4.建物の持分2分の1の賃料相当額 632万6160円
(月額10万5436円×120か月×持ち分2分の1=632万6160円)
特別受益に関する判断
1.使用期間中の賃料相当額を使用貸借権の価値に加えることができるか(否定)
使用期間中の使用による利益は、使用貸借権から派生するものといえ、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当であり、使用貸借権のほかに更に使用料まで加算することには疑問があり、採用することができない。
2.使用賃貸借権の価格はどのように算定するのか
本件では、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて、被相続人死亡時点の本件土地の更地価格を算出し、これに15%を乗じた価格をもって本件土地の使用貸借権価格としました。
3.本件土地の使用賃貸借は特別受益にあたるのか(肯定)
本件土地の使用貸借契約の締結(使用貸借権の贈与)は、まさに原告の生計の資本の贈与であるといえ、特別受益(民法903条1項)に当たるというべきである。
この記事へのコメントはありません。