- だれが相続人になるか確認したい
- 法定相続人分について確認したい
- 相続が開始したときに初めに何を調べるべきか知りたい
相続が発生したとき、今後の進行について検討するためには、相続人が誰なのか、相続人ごとの相続分がどうなるのかを把握する必要があります。
遺言を作成する場合も、同様に相続人と相続分を把握して作成するべきです。
このページでは、相続・遺言の際に、最初に把握しておいてほしい、誰が相続人になるか(相続人の範囲)、その相続分がどうなっているかについて説明しています。
目次
1.相続人の確定
1-1.法定相続人
「法定相続人」とは、予め法律で定められた相続人のことです。遺言や相続欠格、廃除などの事由がない限りは、血統や婚姻関係により当然に決まります。
法定相続人は【表1】のとおりで、被相続人の「子」が、第1順位の法定相続人になります。子がいないときは、父・母・祖父母など「直系尊属」が第2順位の法定相続人、さらに、子も直系尊属(父母など)もいなければ「兄弟姉妹」が相続人となります。
また、子、父・母・祖父母、兄弟姉妹とは別に「配偶者」がいれば配偶者は必ず法定相続人になります。
【表1】法定相続人の範囲と順位
⑴血統相続人 | |
第1順位 | 子 |
第2順位 | 直系尊属(父・母・祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
⑵配偶者 |
1-2.相続人の欠格事由
一定の欠格事由に該当する相続人は、裁判などの手続きを要せず当然に、相続をする権利を失うこととされています。
欠格事由としては、被相続人の殺人罪で刑に処せられたときや、被相続人を脅迫して遺言を書かせた場合などがあります。
◯民法
(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
1-3.推定相続人の廃除
推定相続人の廃除とは、相続の欠格事由に該当するほどではないけれども、虐待・重大な侮辱・著しい非行により、被相続人との相続的共同関係を現に破壊していたり、破壊する可能性がある程度の事由があった場合に、被相続人の請求により家庭裁判所が審判によって、その相続権を喪失させる制度です。
◯民法
(推定相続人の廃除)
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
1-4.代襲相続
相続人となる人が、被相続人よりも先に死亡していた場合、その相続人に子供などの直系卑属がいれば、その直系卑属が、相続人に代わって相続します。これを代襲相続といいます。
例えば、被相続人Aさんが死亡しとき、Aさんの長男Bさんが先に死亡していたとき、BさんにCさんという子供(本人にとっては孫)がいたときは、CさんがBさんに代わって相続します。
なお、Aさんの死亡後に、Bさんが亡くなり、最終的にCさんが相続したという場合は、代襲相続とは異なります。このように相続が連続して発生した場合は数字相続といい、代襲相続の場合と異なります。
死亡した順番で相続人の範囲が変わってきますのでご注意ください。
2.相続分の確定
2-1.法定相続分
被相続人はあらかじめ遺言をすることにより、自由にその遺産を分配することができます。しかし、遺言による指定がない場合は、その権利義務の帰属先に困るため、法律で、予め相続人となる者を定め、各共同相続人が取得しうべき相続財産の総額の割合を決めています。この割合のことを法定相続分といいます。
各相続人ごとの具体的な法定相続分は下記のとおりです。
相続人 | 法定相続分 | |
---|---|---|
相続人 | 割合 | |
配偶者のみ | 配偶者 | 100% |
子および配偶者 | 子 | 2分の1 |
配偶者 | 2分の1 | |
直系尊属および配偶者 | 直系尊属 | 3分の1 |
配偶者 | 3分の2 | |
兄弟姉妹および配偶者 | 兄弟姉妹 | 4分の1 |
配偶者 | 4分の3 |
2-2.遺言により法定相続分と異なる定めができます
被相続人は、遺言をすることによって、共同相続人の相続分について、法定相続分と異なる定めを設けることができます。相続分の指定は、遺言者自らが決定することが通常ですが、自ら指定せず第三者に委託することもできます。
ただし、この定めが遺留分を侵害している場合は、侵害された範囲で遺留分減殺請求を受けることがありますので注意が必要です。
2-3.特別受益者の相続分
被相続人から、遺贈を受けたり、生前贈与を受けていたことのある相続人がいる場合、相続分の算定にあたって、おkのことを考慮に入れておかないと、不公平になってしまいます。遺贈や生前贈与は相続分の前渡しと変わりがないからです。
そこで、これらの特別な利益を受けた者がいたときは、その者が被相続人から得た利益の額を相続財産に加えて(持戻して)相続分を算定しなければならないとされてました。
2-4.寄与分
共同相続人のなかで、被相続人の事業を手伝ったり、資金を提供したり、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした者があるときは、相続分からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして、各相続人の相続分を算定し、寄与者にその控除した寄与分を加えた額を相続させることとなっています。
相続人中、特別な寄与をして被相続人の財産を増加させた場合は、他の相続人は何ら労なく増加を相続できることとなると、特別な寄与をした相続人にとっては酷になる場合があるので、このような場合は相続分が修正されます。
3.相続人・相続分のまとめ
実際には上記を参考にして各事案における各相続人の具体的な相続分を算出することになります。その流れは、下記のとおりです。
具体的な相続分の求め方 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
|
3-1.法定相続人の確定
はじめに、法定相続人が誰になるのかを調べます。相続人の欠格事由に該当したり、推定相続人から廃除されていた場合は、その相続人は相続人となりません。また、相続人の中で、すでに死亡している者がいたりおらず、欠格事由に該当したり、廃除されている者がいれば、さらに代襲の有無を調べて相続人を確定させます。
3-2.法定相続分
法定相続人が確定すると、各相続人の法定相続分が決まります。上記の1に照らして各相続人ごとの具体的相続分を算定します。
3-3.相続分の修正
遺言による指定、特別受益や寄与分があれば相続分が修正されます。
このように相続人・相続分は様々な事情を考慮して定められることになります。
非常に複雑ですが、基本となるのは「法定相続人と法定相続分」です。法定相続人と法定相続分を理解したうえで、欠格事由・廃除・代襲相続による相続人の範囲の修正、特別受益・寄与分による法定相続分の修正要素があるとご理解いただければと思います。
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